古いフィルムを手にする。

 

デジタルに慣れた目がふと止まる。

 

そこに写されていたのは、
ちいさな森のような場所、閉じ込められた時間。

 

もう、いつ誰と行ったのかさえ忘れているのに
わたしの奥にあるこの場所へ
記憶が引き戻される。

 

あの頃といまの時間が重なり合う。

 

なぜ撮ったのか、とうに忘れているのに

記憶の余韻は「好きだった」だけでは終わらないまま瞬間冷凍され、

幾つかの時間を超えて

いま、わたしの手の中で解凍されているのだ。

 

過去にはちゃんと見えていなかった物事を写し取り

 

封じ込められた像が生まれ還っているのがわかる。

 

だから、どれだけ月日が経っても

 

記憶をじゅうぶん味わっていいのだと自分に許可を出す。

 

きのうまで夢中に話していたことが

 

きれいさっぱり忘れられ
つぎつぎに新しいものごとへ流れてゆく
そんな現代の中で

 

わたしがわたしであるために

 

わたしがわたしを守るために

 

 森の静寂を味わえるようにと

 

シャッターを押したあの時の

 

 

溺れる感情のままでいい。

 

 

 

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