NIKON D850   Carl Zeiss Makro Planar 50mm F2

Model:  心月 -mitsuki-

 

 

 

「ポートレイトをもう一度撮りたい」

 

3年前。

どこからともなくわたしを突き動かした衝動は

未だ終わることなくつづいている。

 

ひとの生きざまの断片を残すと言う

生々しい欲をさらけ出す人物撮影の本質は

つまるところ、シャターを切るそのひと自身の影。

 

決してわたしを写したいとは思わないのに

ひとを撮りたい、という抗いようのない矛盾を感じながら

撮りつづけることもまた、

哀れで、いやらしいわたしの一部なのだ。

 

 

そもそもポートレイト(肖像)写真とは

どのような写真を指すのだろうか。

 

「ひとの顔が写っていて、その人物が特定できる写真」

とゆるく括って説明すれば

パスポートや身分証明書に使われる顔写真のみならず

広告写真やスナップ写真に写り込んでいるひとの写真も

人物を捉えた写真として見ることもできる。

 

またインターネット上にアップロードした写真を

自分のプロフィール写真として公開したり

写真に写っているひとをシェアすることが一般的になっている昨今、

 

膨大な数の「ひとの顔の写った写真」が個人情報の一部として公開され

そういった写真を見たり見られたりすることが日常化している。

 

 

場合によっては写真の公開の是非を巡って「肖像権」が問題となる。

 

こういった「ひとの顔が写った写真」が

世の中に溢れかえる状況のなかで

 

写真家が「ポートレイト写真」を撮影し

作品としてまとめて発表する写真は

《明確なテーマを持って撮影されていること》

《写真家と被写体になる人物の間の関係性に深く根差していること》

が重要な意味を持つ。

 

また、ポートレイト写真という形で発表することによって

通常はあまり目を向けられることのないような、

多様な人々の存在を世の中に表明したいという意図も含まれることでもある。

 

したがって、写真家が、自分のプロジェクトとして

ポートレイト写真の撮影に取り組む場合

 

実際に行う前に、事前に綿密な調査をしたり

コミュニケーションや対話を重ねて

互いの理解を深めたりする階段が必要になってくるのは

案外知られていないことのひとつかもしれない。

 

撮影を続けることによって

被写体との関係性を徐々に深めていくということもあれば

その逆もあるリスクを背負わなければならないのだ。

 

 

どのような場合にせよ、ポートレイト写真の撮影は

ひととの関わりあいの上に成りたつものである以上、

 

写真がまとまった数のシリーズ作品として発表するためには、長い時間を要するもの。

 

場合によっては、完結した形としてまとめあげることが難しいことも多々あるだろう。

 

ひとことで言えば

関係性のうえに根差し、

ひとを通して時代や社会をも描き出した写真こそが

 

作品として成りたつ「ポートレイト写真」

と呼ばれるに相応しい。

 

世の中に数ある「ひとの顔が写った写真」と

「ポートレイト写真」を識別するとしたら、

このような要素が浮かび上がってくるだろう。

 

ポートレイト(portrait)という言葉の語源は

フランス語のportraire (por-traher前に+引きずりだす) に由来する。

 

それゆえ、ポートレイトは表面に現れていることを

写しとることにとどまらず、

 

被写体の内側、あるいは背後にあるものを

前に引き出すように描き出すことにその意義があるのだ。

 

 

したがって、「ポートレイト写真を見る」

ということは、写された人物が誰かを識別し

風貌を眺めるということだけではなく、

 

その人物の視線や、表現、服装、姿勢、仕草、

背景の場所や環境、

さらには撮影された時期や季節時間など

 

他人の人生が切り取られた瞬間のなかを通して

さまざまなディテールを注意深く見つめることで

 

その人物の内面や社会的な背景などを

想像し、その投影を味わっていることになるのだろう。

 

 

 

ポートレイトとは何か?問いのひとつに

「シャターを切るそのひと自身の影」をあげるとすれば

 

ポートレイト写真の力、とは

写されたひとの姿を通して自身のことに引き寄せ

内在する自分と語り、時間を巡らせる

そういった重層的なエネルギーのことを現していると思うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“全てのカメラ女子たちへ五感で受けて立て 5” への1件のコメント

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