The Graces book preview: shop.commandoart.com from Thomas Holm on Vimeo.

 

Books

 

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イメージへ同化する時間へ

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写真になにができるのかと考えるとき、

わたしはそれぞれの作品集1冊が持つ“至福感の共有”を想い起こす。

 

場所も民族も宗教も言語も超え、“同じ時間を知っている”という悦びを

これほどロマンティックに残せる物質は世の中で見かけることがないと想うのだ。

 

それは、ここではない彼方にある

自分だけの秘めごとに似た感覚でもある。

 

ご紹介する「VINAS ON MARS」

写真が好きなひとで、そこへかける時間を愛おしいと感じるひとであったらなら

ぜひ手に取ってほしいの作品集だ。

 

一生で、「これだけは譲れない美意識」があるならば

それを象徴するイメージへ同化する時間をどれくらい持っていたか

に尽きると思う。

 

その自分へ集中こそ

人間の認識欲求を満たしてくれる深いリラックスへとつながる。

 

なぜ、写真集なのか?というと

「無駄のない情報を封じ込めている」から。

数千と撮り尽くしたであろう最高の写真の中から

さらに絞り込んだ熱量はどんな人にも届くからだ。

 

そしてもう一つ

誰もが知っているようで、実はよくわからない

でも目にした時から気になっている・・・

という写真作品をワンランク上に愉しむには

まずは作家の製作した意図や背景を遡らなければ本質的に理解できない。

 

大雑把に言えば、写真作品は現代アートに位置する。

これは、美術という文脈の中のほんの1ページでしかないかも知れない。

 

逆に言えば、オンライン上で1ページだけ読んで

その物語のすべてを知ったかのように読み進めるのであれば、

やはり、いつまでたっても「理解できない」で終わってしまうのだ。

 

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五感フル解放の色とは

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自分の中で「これだけは譲れない」

という美意識を探るのは快楽な旅のようなものだ。

 

写真という表現が日常の中で当たり前になっている現代において

最新の情報を集めるのは、もはや容易い。

検索窓にキーワードを打ち込めば、

好きな写真や写真家を見つけることも瞬時にできてしまう。

 

けれど、本当に見たい本質へ光を当ててくれる揺るぎない存在や、

絶対的に信じられる優れた作品というのは

どうやって出逢えるのだろう?

 

そう考えた時、わたしに悦びの光を与えてくれる作品は、

圧倒的にモノクロームが多かった。

 

さらに興味深いのが、色のない世界は、

写真の歴史などひとつも知らない人でも

同じように心が動くという、人の潜在的な心の動きがあるということ。

 

そこには難しい理屈も長い理由もない。

時代を超えて感動することができる貴重な作品として

五感をフルに解放して愉しめばいいのだから。

 

 

 

 

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作家の至福感が宿っている

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「意味なんか求めずに心のまま感じればいい」

 

Thomas Holm氏の写真を見ていると、

耳元でそう囁かれているような気がする。

 

写真が持つその言葉こそリアルであり

わたしたちを捉えて離さない魔力なのだと思う。

 

彼の作風からはどうやっても引き込まれてしまう静寂が流れている。

ひとことで言えば、美しい詩を読んでいるような作品だ。

 

その詩が、完璧な構図と軽妙な偶然性を兼ね備えているからこそ

彼の撮影する背景について状況を巡らせることができる。

 

登場する美しいモデルたちに反した

厳しい条件でのロケーションを垣間見ると

創作し続けることの厳しさ、精神力を想うととても厳粛な気持になる。

 

なかには、なぜこれを撮ったのか?

危険極まりない、謎が残る作品もある。

 

もしかしたら彼は、大地に裸で陽を受ける快楽に

心奪われている人たちのように

きわめて開放的で普遍の瞬間が作品なのかも知れない。

創作することで、彼自身の至福感を保っていれたのかも知れない。

 

何れにしてもわたしは、

「ただ、感じる」という作風に魅了される。

 

言葉では言い表せない絶妙さ、

どこを切り取っても詩的な流れ、その詩が物語を生み

見るものの心を惹きつけて離さない写真の創作を。

 

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自然と対峙するその時空間を至福を想うとき

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集中を極めた撮影現場から放たれる純度の高いエネルギーは

被写体となったその人のこころを占める至福の時間を

その恍惚の真っ最中を

共有しているかのような感覚に陥る。

 

荒野で、砂丘で、崖の上で

吹きすさぶ風とともに

照りつける太陽に向う

どれも束の間のような

もしくは、永遠にも感じる瞬間に

研ぎ澄まされた意識だけが残る。

 

人が自然と対峙するその時空間を至福を想うとき

置いていったのは無防備なまでの肉体だけだ。

 

その姿をファインダーによって残され

「写真集の中でそれを見ている」という

立体的な回路がページをめくるたび生まれる。

 

きっとこの人と同じ時間を持てていると

どこまでも自由を感じる悦ばしい安堵が湧き上がり

やがてそれは、場所も言語も超えて

彼らと同じゆたかな時間を知っているという

柔らかな衝撃が芽生えている。

 

やがて、その瞬間が与えてくれる無償の悦びに満ちた

誰にも邪魔されない独りだけの世界に佇んでいることに気づくのだ。

 

写真という一瞬が与えてくれる無償の悦びは

本の数だけ宿っている。

 

 

 

Venus On Mars, E-Book by Thomas Holm

 

 

 

 

 

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