Photo@IWATA NAKAYAMA

 

魅力的な写真家とその作品をご紹介するシリーズ「読む寫眞」。

できれば、ダンディな日本の写真家のことを書きたいと思うのだが

有名どころすぎてもつまらないし、

無名過ぎても魅力が伝わりにくいのが悩ましい。

 

それでもあえて伝えたい。

人の才能などどうでも良いという風潮の現代、

語らずにはいられないと思わせてくれる異才を

無意識に求めているのもまた

わたしたちの事実なのだから。

 

 

世界的に見ると地味な立場の日本の写真家。

そのたちの中で、中山岩太氏ほど

華麗な経歴の持ち主はほかにいないかもしれない。

 

画家の藤田嗣治やアーティストのマンレイを知っていても

彼の名がすっと出てくる人はまだ少ない。

 

 

中山氏は、1895年福岡県の柳川生まれ。

1918年に東京美術学校(現東京芸術大学)に新設された

「臨時写真科」の最初の卒業生となる、生粋の「斬新」派だった。

 

卒業と同時にアメリカに渡りカリフォルニア大学で学んだ後、

3年後にニューヨークに移る。

(すごいスピード!)

 

すぐに肖像写真スタジオを開業、経営、

写真家としてスタートを切る・・・・・・

 

という

マッハ級の行動力とスピードな写真家であるが

まだ名前が通っていないのは不思議だ。

 

凡人のわたしから考えると、ほとんど映画のようなストーリーを

リアルで生きた作家のひとりだと思っている。

 

それも、90年も以前の日本が戦時中の話なのだから

ぜひ、この機会に覚えていると

近い将来、映画化されたときにきっと楽しいであろと思う。

 

Photo@IWATA NAKAYAMA

 

その映画の主人公並みの中山氏は、パリに移り、ファッション誌の仕事をしたり

マン・レイや未来派の画家のエンリコ・プランポリーニと交友したりするなど

ますます斬新な写真家としての経験を深めてゆく。

 

スピード出世の彼は1927年11月に帰国

現在の兵庫県芦屋にスタジオ兼住居を構えた。

 

その後、現役写真館が存在するハナヤ勘兵衛、

紅谷吉之助らと芦屋カメラクラブを結成。

 

ニューヨークで鍛えた感性と、パリで培った独創性は

日本の前衛写真のトップであり続け

同時に、「広告写真」でも名を飾っていった。

 

1930年、朝日新聞社が主催する「第一回国際広告写真展」に

「福助足袋」を出品して一等賞を受賞している。

 

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また、1932年には野島康三、木村伊兵衛と写真雑誌『光画』を創刊。

【写真芸術黎明期】と呼ばれる壮美な世界観を確立していった。

 

『光画』は、毎号作品を発表するなど、華々しい活動を展開する。

 

中山氏を中心とした「芦屋カメラクラブ」の写真家たちの作品は

同時期の日本における「新興写真」(写真のモダニズム)の運動を

リードする役目を果たした。

 

参考画像

 

 

自ら「純芸術写真」と称した中山氏の作風は、

フォトグラムやフォトモンタージュを駆使して

幻想の美の世界を構築するもので

どちらかといえば現実志向が強かった当時の日本の写真界では

かなり異色のものだったに違いない。

 

「私は美しいものが好きだ。

運悪るく、美しいものに出逢はなかつた時には、

デツチあげても、美しいものに作りあげたい」

(『カメラクラブ』1938年1月号)とまで言い切っている。

 

このような強烈な耽美主義の主張に対しては批判の声もあったし、

軍国主義に傾斜していく時代の状況の中では孤立することも多かった。

 

それでも彼は昂然と胸を張って

「自己陶酔の境地」を求め続けていった。

 

 

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1930年代後半から40年代にかけて

中山のモンタージュ作品はより象徴性を深め、自在なものになっていく。

同時に女性ポートレートの傑作「上海から来た女」(1936年)や

一連のヌード作品のようにエロティシズムの極みというべき作品が次々に制作された。

 

1945年、長く続いた戦争がようやく終わり

写真家たちはふたたび自由な創作活動をおこなうことができるようになる。

 

中山氏にとっても新たな一歩を踏み出す契機となるはずだった。

しかし、残念なことに戦時中に蝕まれていた体力がそれを許さなかった。

1949年に脳溢血で倒れて死去。

まだ53歳という作家の盛りだった。

 

 

近年、海外から見た日本写真や「新興写真」の再評価が進む。

その流れで中山氏の作品にもようやく日本でも注目が集まるようになったことは

個人的にとても喜ばしいことだ。

 

90年前の作品とは思えない衝撃的なセンス。

視覚表現としても秀逸な広告美術。

もし、彼の名を知らなくとも作品に出逢ったら忘れることができない。

 

ここ数年、美術館などで開催されたインスタレーションで

彼の仕事ぶり全体像がくっきりと浮かび上がってきた。

世界も時代も超えた作品を

インターナショナルな視点で見直していくことは

現代人の大いなる刺激となるだろう。

 

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中山岩太―Modern photography

 

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