日々是写実をご愛読頂いているみなさま、こんにちは。

お変わりなくお過ごしでしょうか?

普段はフォトエッセイや写真まわりの記事を書かせていただいていますが

ご自宅で過ごす時間が長いこの時期こそじっくり作成したい“資料つくり”

についてまとめてみました。

アーティストに大切なステートメントや考え方、

参考本などもシェアしていますので

ご興味のある方はぜひ最後までお読みいただけたら嬉しいです。

 

内容は、

・ステートメントの書き方やその役割

・コンセプトを深めるにはどうしたらいいか?

・アーティストレジデンス企画の紹介

・現代アート思考に役立つ書籍

・アーティストレジデンスのメリット

・応募前にチェックしたい大切なこと

・作家と作品はリンクしている

・本当に必要な作品ステートメントとは

など・・・

 

これまでワークショップでお話ししていた内容に加えて

“より計画的な創作活動”へ役立ていただけるよう

「ステートメント・プラン」として書いてみました。

特に、アーティストステートメントをこれから準備する方や

作風を練りなおしたい方、

制作プランニングについて知りたい方へ特化したレポートとなっています。

 

巻末には人気のアーティストレジデンスのリンクがありますので

ご参照くださいませ。

尚、参加したいプロジェクトがある方は各自ご確認くださいますようお願いいたします。

それでは、3連載「ステートメント・プラン」お楽しみくださいませ。

 


西洋の真似で終わってしまう人は、純粋すぎて芸術の中心部分しか見なかったからこそ成功していなかったのかも知れません。見る人と、心が共振するところをノックして揺さぶるという意味では、サブタイトルを利用することも必要なのです。見る側と作る側の両方を覚醒させるものが芸術なのですから。ーーー村上隆著「芸術起業論」より

 

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本当に必要な作品ステートメント

書いていますか?

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作品ステートメントとは、すべての作家にとって

その作家の軸になる大切な説明文です。

作品を通してアーティスト自身が探求し、

突き詰めている世界観を言葉に表したもの。

 

ステートメントには個展のような壁を使った展示の時にも

インスタレーション用にも適切なものがあり、

どちらも「テーマ」「制作の意図や動機」を説明する意味合いとなっています。

なぜなら、人が表現した世界に初めて触れる観覧者たちにとって、

他者の脳内に出逢っていくようなものなので

その時にまったく知らない白紙の地図では目的地まで辿り着くことが難しい。

 

つまり、ステートメントとは、

オーディエンスが作品という深い深い海に潜るための

“道しるべ”の役割を果たすものだとイメージしてください。

 

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より純度の高い表現のために

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総じて、自分が知らないアーティストの作品を“丁寧に鑑賞する力”

がある人の方が稀です。

特にコンテンポラリーアートとしての写真表現などでは、

眼の前に写っている対象物や文脈、特定の限定的場所や人物、

仮説やその関係性といったキーワードが比喩されている場合が多く、

それらの情報をゼロから共有する必要があり、

ある意味、その導線を整えることは発信側のエチケットです。

 

タイトルやステートメントが存在することで

より多くの方をより深海まで導けるようになり

それによって純度の高い表現の共有可能にし作品の深みに触れて頂けるのです。

 

ステートメントの性質は発表時の環境によって内容が若干変わります。

長文かつ物語性のあるパフォーマンスが求められる場合もありますし、

端的でなるべく少ない文字数のステートメントが適切な場面もあります。

特にコンペティションなどでは最低限の情報のみ記載するような

タイトな内容にする必要性も多々あるでしょう。

 

大切なのは、“作家の純粋性を伝えるための記述”

という本質を忘れないことです。

本当に残したい言葉があれば、例え長くなっても

それを書き記すべきだとわたしは考えますし

講座でもそのようにお伝えしています。

 

なぜなら、純粋なエネルギーのアウトプットこそ作家の真性が露わになるからです。

どんな時代も変わらずオーディエンスはこの琴線に触れたい。

 

このスタートラインに立ち返り、他の多くのアーティストと異なった

独自の世界観をプレゼンテーションしてゆくことが

ステートメントをプランニングすることの目的なのです。

 

 

アーティストの数だけコンセプトがあります。

そもそも表現とは、なにかを獲得する行為でも誰かと戦うことでもありませんから、

ステートメントで悩んでいる方は、躊躇なく

作品の深海へ連れて行ってくださるような工夫をしてみてください。

 

比較から生まれる優越や承認の言葉ではなく、

より純度の高い表現のための道案内を。

 

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コンセプトの掘り下げ方のヒント

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それでもまだ書くことがまとまらない、

迷いがある場合にお勧めの方法があります。

 

あなたやあなたの作品を批判し、

ネガティヴな意見や態度をする人をイメージして

それらに対して言語で反発してみるという、

潜在意識を活性化するイメージワークです。

 

無自覚に持っている心理的な抵抗をゆるめるのに最適ですので

ビジネスに関わる悩みにも良く使われています。

わたしは、制作プロセスでスランプに陥ったときや

新しいプロジェクトの作風を深めるときなどにも活用しています。

 

やり方は一人でも可能なのですが、可能であれば

アーティスト同士で疑問点を挙げるディスカッション型がスムースです。

質問に丁寧に回答してゆくことで認知療法としての効果が絶大になるからです。

 


こんな経験があります。

わたしがパリに滞在していたときのこと。ある日、同じアパルトマンに住む

美大へ通う友人が

「最近スランプみたいだから付き合ってほしい」と言って、

自分へのネガティヴな意見を求めてきたことがありました。

友人の作風が好きだったわたしには難度の高いゲームでしたが、

彼女のためにトライしてみました。

 

「なぜこの素材をここで使ったの?全然理解できない」

「どうしてこんなモノを作るようになったの?どこがいいの?」

「これを続けてどうするつもりなの?」

「完成したらどこで観ることができるの?どうやって知らせるの?」

 

イジワルな言葉を投げかけるわたしに、友人はたっぷり時間を使って

丁寧に反論していました。

時どき涙目になり、怒っているようにも見えました。

けれどそれこそが彼女の無意識レベルで“燻っていた情熱”

なのだとすぐにわかりました。

 

話しているうちに思考が整理され、その結果、

本来の純粋な望みに気がつくことができるです。

 

かつてパリのサロンにたむろしていた芸術家たちも

こうしてお互いの創作を刺激し合い、

オリジナリティを深めていったのかもしれない・・・。

喋っているうちにわたしは、

当時のサロンの存在を追体験しているような感覚がしました。

 

そうして慣れないアウトプットをしているうちに、友人は

「どうしても自分がやらなくてはいけないことは何か?」

という結論に辿り着きました。

 

人は自分の思考になかったことを問われると、

その空欄の答えを埋めるように脳がフル回転します。

そのとき咄嗟に出てきた答えがただの妄想であろうと、

作家性を深めるためであれば構いません。

その人の中で眠っている言葉たちを引き上げてあげるだけで

迷いや葛藤がクリアになるからです。

 

名付けて《ネガティヴクリアリング》。

コンペティション前に再度コンセプトを深めたいときや、

セルフブランディングを強化したい方

スランプを脱したいときにぜひトライしてみて下さい。

 


最後にアーティストレジデンスのリンク先をシェアします。

注意)ここでご紹介するレジデンスのパートナー助成金、滞在費宿泊費、食費、交通費、クリエイティブ・スペース、キュレーション・プログラムなど、企画運営に関わる内容確認のお問い合わせは各自でお願いいたします。

 

 

Danish Art Workshops

https://svfk.dk/en/

現代アートや写真表現者に大変人気のあるオランダのプロジェクト。大規模で多様なインスタレーション、彫刻やテキスタイル、物、暗室プロジェクト、作業するためのスペースを提供しています。、織物、暗室プロジェクト、陶芸など同じような規模の作品を制作できる場所は他にないと言えるほど充実している。暗室や大判の引き伸ばし機、最大用紙幅 44″/110 cmのプリンターの使用も可能。応募方法はスタジオの空きカレンダーをチェックし審査内容を提出する仕組みで年4回まで受付。

 

Luxembourg Art Prize

http://haps-kyoto.com/luxembourg-art-prize/

ルギー、ドイツ、フランスに囲まれたルクセンブルグのプロジェクト。最終選考者が団体展に必要とする費用は全て(作品の輸送、航空機および電車代、3食付き5つ星ホテル滞在費)組織が負担するというレジデンス企画。ルクセンブルグ公国に一緒にご滞在になる人物の費用に関しても同様の扱いがありがたい。

 

nairs

https://nairs.ch/de/kuenstlerhaus/

最長10ヶ月まで滞在できるチューリッヒのアーティストハウス。現在、オランダのAargauerKuratoriumおよびStichting Stokroosとスタジオパートナーシップを結んでいる。展示や出版物にも力を入れている。

 

SWATCH ART PEACE HOTEL

https://www.swatch-art-peace-hotel.com/

応募倍率などは公開されておらず、審査はスイス本国で行われている模様。年度ごとの応募というわけではなく、合格通知が出たらレジデンスの空き状況と自分のスケジュールを考慮しながら参加時期を決められるという制度。ただし年ごとの応募の場合は指定された日程で参加できないと参加資格が無効になることもあるので注意。渡航費助成、中国ビザ助成つきで大変人気のレジデンス。

 

HARIBAN AWARD

http://benrido-collotype.today/collotype-competition/

世界でも希少となったコロタイプ技法を伝え、また実践し提供している便利堂が主催。京都のグランプリ受賞者は京都に二週間滞在し、京都滞在中、最優秀賞受賞者はコロタイプ工房のマスタープリンターと共に作業をする。次年度の個展に向けて受賞作品の一部は美術館に収められる品質のコロタイププリントとして仕上げるという。カタログ本文は全てコロタイプでプリントされ、日本の伝統的な和綴じの冊子にして頂けるという作家冥利につきる内容。専門的な設備、歴史、職人との手作業ができるなど付加価値が大変高いプロジェクト。 参考VR :2017年受賞者 Stephen Gill のインタビュー日本語字幕。https://vimeo.com/265134513

 

アーティストレジデンスは年々増えつづけているため、

ここでご紹介するのはほんの一部です。

また、2020年現在の段階では、

現実的に訪れることが難しい場所もあることは否めません。

それを踏まえて、長期プランを立てるチャンスだとわたしは考えています。

参加するしない、という2次元論でなく、

これを機にご自身の可能性を開くきっかけになさってはいかがでしょうか?

 

その為にも世界にはどんな施設があり、

どのような人がどんな創作活動をしているのか?

知っておくことはとても大切な姿勢です。

みなさまのご健闘をお祈りします!

 

コンテンツの強みや作風の魅力について掘り下げたいという方は

IDEA ONLINEフリーセッション までお尋ねください。

期間中無料でセッションをご提供しています。

 

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Vol.1は以上です。Vol.2は制作プランを作る意義と

滞在型レジデンス経験者からの声をお伝えします。

 

 

“ステートメント・プラン Vol.1” への1件のフィードバック

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