チビ太。
猫思想, 日々の泡

チビ太。

 

 

 

チビ太と出逢ったのは1年ほど前だった。

 

公園にふらりと行けば、気まぐれにモデルになってくれていた

茶トラの野良猫。

 

お互い気まぐれだから、

今度はいつ逢えるのかといつも思いながら可愛がっていた。

 

 

 

冬の晴れ間、ひさしぶりに公園へ行ってみると

チビ太やほかの野良猫たちの姿がない。

 

わたしは、予感がして指先が冷たくなった。

 

 

チビ太の姿を探し公園の外まで回ってさがし歩いた。

 

 

2時間以上うろついていたら

公園に住む浮浪者のおじさんから

猫はもういないよ、と呼び止められた。

 

 

わたしが知るだけでも20匹以上はいた野良たちは

猫エイズが発生して集団で保護されたのだそうだ。

 

 

わたしはその場で力が抜け座りこんで動けなくなってしまった。

 

 

かつてチビ太がいた夕暮れの公園は

ダンボールの家で暮らすおじさんたちが

それぞれのベンチでみの虫みたいに寝転んでいる。

 

 

その傍に野良が必ずいた穏やかな風景はもうない。

 

 

「チビ太、たった一年しか生きとらん」

 

遠くを見つめながら誰に話すでもないその声は

木枯らしみたいにしゃがれている。

 

 

乾燥して赤黒い手の皮膚、割れたくちびる。

 

 

 

チビ太はこの人の懐で眠り、一緒に丸くなり

枯葉の匂いを嗅いでいたのだろう。

 

 

わたしはバッグからコンデジを取り出すと

陽だまりの中でチビ太を抱いているおじさんの画像を一枚見せた。

 

 

「写真なんか嫌いだ」

 

しゃがれ声は泣いているようだった。

 

 

わたしは、写真を見せたことを後悔して誤魔化すように言った。

 

「わたしも嫌い」

 

 

ごめんね、おじさん。

忘れるためだけにある写真なんて大嫌いだよね。

 

 

 

 

 

 

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