ECOH
日々の泡, 白黒写実

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「関係ないじゃん!」

 
先日、ある雑誌のインタビューがあり、

怒りに似たセリフが出てしまった。

 

 

言ったとたん、しまったと思ったが

今になってはどうでもいい

 

もしくは

 

誰かがいつか発言するべきならば

わたしが犠牲になればいいだろうとさえ感じたのだ。

 
 
けれど、それは

今でも多くの女性作家が抱えている

受け手の感性水準の低さに

辟易している事実でもあったのだ。

 

駅からほど近い、

古めかしい喫茶店で行われた

写真活動に対するインタビューは

 

 

作品に対する質問から

わたしの個人的な話へと発展し

 

やがて被写体への興味へズレ込み

 

そこから先は、

執拗に舐め回すような質問攻めとなった。

 

 

「読者が気になってると思うんですけどね・・」

 
 
これだから、

日本のおっさんの発想は品がない。
 
 

分析でも鑑賞でもなく

ただの色眼鏡でしか

写真表現を見ることができない。

 

 

写真それ自体の言説も不在だ。

 

 

この時、薄暗い喫茶店の泥のようなコーヒーが

わたしの胃の中で低く蠢めいた。

 
 
「で、それ知ってどうするの?」

 

 

 

いくつも投げかけられる低レベルの質問に

つい嫌悪感丸出しで言い放ってしまった。

 
 
録音されていた。

 

 

 

口から出たことは消せないという

意識が足りなかったかもしれない。

 
 
けれど、わたしが平手打ちでもしそうな態度を示さない限り

日本の幼稚な写真業界は

 

いつまでたっても

女性蔑視でエチケットのない

手垢だらけの中古品から抜け出すことができないのだ。

 
 
彼らの質問はこうだ。

 
 

 
・普段モデルと二人でどんな会話をするんですか? いくつ離れてるんですか?
・どんなスケジュールで撮るのですか? 泊りとかあるんですか?
・毎回の衣装はどこで揃えているんですか?
・ひとりの被写体を撮る理由を聞かれたりしませんか?

 

 

東京からおっさん二人がわざわざ出向いて

何を言い出すかと思ったら

そういうことか・・・・・

 

 

「関係ないじゃん!」

 

 

 

思わず言ってしまったけれど後悔はしていない。

 

最終的には

インタビュー掲載もキャンセル。

本当はあえて載せて欲しいぐらいだったけれど

相手から断られたみたいだ。

 

 
日本の悲しい縮図のただ中にいる、と痛感した。

 

 

「もうちょっと上手く立ち回れるようにならないとね」

もう一人のわたしが肩越しに囁く。

 
 

「いいじゃない、2度と逢うわけじゃないし。

そもそもここに来ること自体、

何かの間違いだった、そういう日もあるわ。

だからキャンセルになって正解。」

 

 

もう片方の肩から、

分身のようなわたしが顔を覗かせて

誰にでもなく話しかける。

 
 

〈上手くやりなさい

上手く笑いなさい、

業界のおっさんなんて適当にやれるはず。〉

 

 

〈そうじゃない。牙を向け。嚙みつけ。叩き壊せ。〉

 

果てしなく聞こえる声の姿が

サタンとエンジェルであれば

映画みたいで面白いのにと思うのだけれど

 

 

現実はすべて

自分自身の弱さの象徴でしかなく

消え入りそうな遠吠えだ。

 

 

 

担当者のふたりが喫茶店を出て

駅裏の安っぽい油の匂いがたちこめる

仄暗いローターリーの地下へ帰ってく後ろ姿は

 
 

生命力の強い黒々とした昆虫が

忌々しく触覚を動かしながら

巣穴へ向かっているように見えた。

 

 

「忘れましょ」

彼らの後ろ姿を記憶から消すために

 

また、誰かの声が耳元でこだまする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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