永遠の一瞬
日々の泡, 白黒写実, 随想

永遠の一瞬

 

 

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わたしが初めてアルチュル・ランボオを知ったのは、

サントリー・ウィスキーのCMだった。

 

確か、小学生の頃だったと思う。

日曜のテレビ番組を見ていると、

ふいに現れる奇妙な映像と音楽。

 

砂漠で火を噴く男

道化師

タンバリンを叩く少女

踊る小人

化粧をした大男

 

共演するでもなく

台詞があるわけでもなく

 

彼らは、ただ、

そこに存在している。

 

 

砂丘を背景にした映像のほか、

ガウディの建築をバックに

さまざまな登場人物が隠れては姿を現す。

 

夢のつづきのような世界は、

子供では到底理解できない映像美だった。

 

こんなCMをこれまで見たことがなかった。

 

実に奇妙で、少し怖い。

 

けれど、どうしようもなく惹かれた。

そこに理由なんてなかった。

 

 

わたしは、どうしても知りたい衝動にかられ

本屋へランボオの詩集を買い求めた。

 

 

そして何度も貪り読んだ。

 

小学生のわたしでも、

彼の作品にノックアウトされた。

 

ランボーの、若い魂の葛藤と反抗は

どこか官能的で、

突如、わたしは別世界に出逢ったようだった。

 

毎日、カバンに入れて持ち歩き

気が向くと本を開いて

別世界へ旅に出た。

 

 

そして、あのサントリーのCMの映像が

ランボオの詩を象徴している自由の境地

 

アフリカの砂丘だと

理解できたように感じた。

 

 

わたしの中で生まれた

知り得たい衝動と

言葉とが巡りあい

溶け合う

あの頃の至福。

 

永遠の旅を味わう幸せな無限時間。

 

 

 

何年かたって少しだけ成長したわたしは

ゴダールの映画「気狂いピエロ」のラストシーンで

この詩に再び出逢い

 

小林秀雄氏の言葉で覚醒し

別の世界で描かれた小説のなかで

 

アルチュル・ランボオと語ることができた。

 

 

ランボオの魂と語る。

 

わたし以外の誰かと

ここ、ではない空間で

 

言葉もなく語るという

矛盾に満ちた時間をなんと考えればいいのか。

 

 

「永遠」 この詩を想うとき

人は、その無時間にふれていると想いたい。

 

 

ランボオの詩が記憶に蘇るその度に

わたしは

子供の頃、狂ったように読んだ

あの永遠の旅の無時間のなかにいるのだ。

 

 

一瞬の永遠。

 

 

やがて永遠になり

わたしの一瞬に在れ。

 

 

 

 

 


 

 

 

アルチュル・ランボオ 「永遠」Éternité

小林秀雄訳

 

 

 

 

 

見つかった

何が? ―〈永遠〉

 

海と溶け合う太陽が

 

 

見張り番する魂よ

そっと本音を語ろう

 

こんなにはかない夜のこと

炎と燃える昼のことを

 

 

世間並みの判断からも

通俗的な衝動からも

おまえは自分を解き放つ

そして自由に飛んでいく

 

 

だって きみたちだけなんだ

 

サテンのような緋の燠よ

 

義務の炎を上げるのは

 

ついに という間もないうちに

 

そこに望みがあるものか

救済だってあるものか

忍耐の要る学問だ

煩悶だけは確実さ

 

 

見つかった

何が? ―〈永遠〉

太陽と一緒に行った

海のことだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2 thoughts on “永遠の一瞬

  1. 吉野さん
    ご丁寧なコメントをありがとうございました。

    わたしも、地獄の季節にこころを奪われました。
    あの頃のマグマや湧き上がる消えない炎を持っているのだと自分に気づく瞬間って楽しいですよね。

    お読み頂き光栄です。

  2. 僕もアルチュール・ランボオにノックアウトされた一人です。

    高校生の頃、僕が敬愛していた数学の先生が、
    小林秀雄も卒業生だった、と教えてくれ、
    彼が母校に訪れた時の様子を話してくれたことが、
    きっかけでした。

    彼の批評作品を読むうちに、
    関心の対象がランボオに移り、
    ポケット版の地獄の季節を通して、
    仏語を学びました。

    それ以来、
    僕の高校生活は、
    ランボオと数学と演劇に染まり、
    心に点ったマグマの熱は、
    社会人になった今でも、
    ふとしたきっかけで、
    湧き上がってくるのを感じます。

    今、マキコさんの映像と言葉に触れた瞬間も、
    それを感じました。
    ありがとうございます。

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