iPhoneで暇つぶしをしてると

地球の裏側に住む

見知らぬ若者のスナップにときおり紛れ込んでいる、

息を呑むほど心を揺さぶる写真に出逢うことがある。

 

表現の世界とはそう言うモノだ。

 

そんな感動に出逢うとき、わたしは素直にうれしくなる。

 

ギャラリーや美術館で選りすぐられた作品を

シュッと背筋を伸ばして鑑賞するのとは違った

完璧にリラックした贅沢な写真の楽しみ方だからだ。

 

コーヒーを片手に、ソファでくつろぎながら

意識だけは写真のストーリーをさまよっているような

旅の入り口みたいで好き。

わたしの写真ももっと軽やかな美意識で触れたり

触れられたりしたい。

 

 

はじめてカメラを手にした頃

「写真の悦びってなんだろう?」と考えてみたことがある。

 

連続した時間のなかの瞬間を切りとり

肉眼でとらえられない姿をかたちにできるのが

いちばんの魅力だと思っていたけれど

本当はそんなこと

どうでもよかったのかも知れない。

 

ふだんと違うあの人の不安そうな表情、

こちらを見つめる人の動作そのものの美しさ、

夏空へ翼を広げわたしの足元に影を落とす鳥の重力、

朝靄と樹々のあいだにだけに現れる雫の色香。

 

それらはファインダーを覗いたときでしか感じることができない瞬間だ。

 

写真を続けていくうちにわたしの思惑は少しづつ変化していった。

 

目の前の現象に感じたこと、その世界を

すべてすくい取って

永遠にしてしまいたいという残酷な欲望が

写真の本質に違いないと。

 

シャッターのリズム

記憶のなかで曖昧になる肌の色

髪のゆらぎ

じっとしていない光。

 

それらはいつまでもわたしの意識のひとつになる。

 

欲深くなるうちに

写実は表現ではなく

事象を翻訳しているのだと言うことに行きついた。

 

どれだけ長い時間をかけても語れないことを

文字も声も使わずに写真というかたちに変換できる

その圧縮された時間の重なりが見る人の高揚感を呼び覚ます。

 

だから音楽にいちばん近い。

 

 

世界中で、たったひとりの人間の横顔から

いくつもの物語が作られてきたのだろうと思う。

 

その人を写すことで

いかなる未来を歩むのか

何を想い何を感じ

いま、目の前に現れているのか

翻訳された写真を偶然見つけた他人の心にどんな感情を与えるのか。

 

同時にそれら他人の意識は

結果として現れるだけであって

「写真そのもの」には関係のないことだ。

 

そうやって無責任にファンダーを覗く。

残酷な欲望を翻訳してゆく。

 

わずか数センチのピント位置を変え、

無駄な1行を削るために半歩だけ前に出てシャッターを切る。

 

自動で変換される安っぽいタイムラグなんかじゃなく、

もっと手応えのあるリアルな偶然を。

 

 

 

 

Model :心月 MITSUKI

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作品集 GENDER MYTHOLOGY ご注文ページ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“NIKON D850 portrait ZEISS Milvus #10 GENDER STUDIES” への3件のコメント

  1. ピンバック: IN Green – 日々是写実

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