Model :心月 mituski

 

 

女性がこの世界で生きてゆくこと

 

この先、写真家で食べていけるのかどうか、よく聞かれる質問だ。

 

プロになりたい、なろうと思うけれど踏み込めないという相談もよくある。

 

世界に溢れるビジュアル表現の中に生きていると、

プロフェッショナルとの線引きがあやふやになってしまっていて

どこからが自分の立ち位置なのかわかりづらいと言う。

だから悩んでしまい、時間だけが過ぎてゆく。

 

男女問わず、表現者たちはこの線引きの上にただ立っているだけで

彼方へ越えようとしてもブレーキがかかるのだろう。

 

プロとそうでない人の差はどこなのか?

それは「覚悟があるか、ないか」ということだ。

 

例えば、あなたに夢のような大きな仕事が舞い込んだとしよう。

 

同時にその仕事のためには先行投資が必要になる。

けれど、持ち手の資金はない。

 

さてあなたならどする?

 

投資とは自らを信じて見えない先に賭けること。

大きな仕事とは、取材のために高額な旅費がかかるかもしれないし

最新のパソコン環境を導入する必要があるかもしれない。

 

照明機材もスタジオも新しく揃え直し、

全く経験のないスキルを身につけるために

長い時間と労力が求められるかもしれない。

 

それでもいいと決めて飛び込んでも、

ない資金はない、という状況。

 

本当にやりたい仕事に出逢ったなら、

わたしなら迷わずその資金を調達するために車や貴金属を売り

使わない機材も売り、贅沢品と呼ばれるものを手放し

親族から借金をしてでもその仕事を受けるだろう。

 

大切なのはその仕事を得るために何かを失ってもいいという覚悟だ。

 

人並みに素敵な部屋に住みたい、新作のワンピースもバッグも欲しい、

その結果、欲しいレンズが買えない、と思う人はプロには向かない

と話すと、ほとんどの場合、

首を縦にしてやっぱりそうですよね、とバツの悪そうな表情をする。

 

もしあなたがミュージシャンだとしたらどうだろうか。

 

たとえ欲しいギターが高価だったら、

全てを手放しても未来の武道館ライブのための投資だと思って

高いギターを買うべきではないだろうか。

 

同じようにカメラは迷わず自分がいちばん欲しいカメラを買う。

レンズもそうだ。

そのカメラを手にしたことで

写真家としての自覚を持つという言い訳にしてもいい。

 

これはもちろん、個人的な意見だけれど

冴えないギターを下げたミュージシャンより、

いかにも上質な楽器と生きている人の歌を聴きたい、そう思うのであれば、

あなたもそうすべきだ、ということ。

 

人生を賭けたクレイジーさに人は感動するのだ。

 

わたしは先日あるプロジェクトを出航した。

 

ちょうど3年前、このプロジェクトのために時間を捧げ

毎日この企画書を練る覚悟はあるか?

友人と楽しく逢う時間を一切やめて時間をつくり

原稿用紙毎日と向き合えるか?

 

年末年始も夏休みもなく実行できるか?と自問した。

 

プロジェクトは何もかもはじめてで手探りなことばかりだった。

 

けれど、わたしはその開拓にこそ自分を賭ける必要があった。

 

誰かがやるべきポジションであったにもかかわらず、

前例がなかったのだ。

 

本当にわたしがやるべきなのか?

どうしたら理想に辿りつけるのか?

疑問は晴れることはなく、眠れない長い夜をいくつも過ごした。

そしてその覚悟を決めた。

 

3年に及ぶ時間をかけてわたしは

そのプロジェクトを成功させることができた。

 

その間、苦手な東京のホテル暮らしや人混みの中を転々とすることになった。

 

留守中の猫の世話や生活の細々とした作業を任せるひとを見つけ、

このプロジェクトだけに注力するように自らハードルをあげた。

 

わたしはわたしの舞台だけを信じていた。

 

スポットライトの下で上等なギターの音色だけを弾いていたかった。

 

足を引っ張るような人も現れた。

そんな人間関係はすべて切り捨てた。

 

そうすることで、人生に本当に必要なことは

どれだけシンプルなのかと知った。

 

長時間の緊張で倒れたことも、睡眠不足が続いた月もあった。

 

歳には勝てない・・・そろそろ限界だ、

心の中で悪魔の囁きが聞こえた。

 

その度にわたしは耳を塞いで気持ちを奮い起こし邪魔者を追い払った。

 

大切なものはひとつだけじゃないか、と。

 

そして、いま、さまざまな出来事を乗り越え、

毎朝の瞑想を日課として

時には友人たちと素敵なレストランで食事を楽しんでいる。

 

規則正しい生活と最高の食事

ストレスのない人間関係だけで環境を整えるように徹すると、

体調はみるみる良くなった。

 

おかげで長時間、創作し続ける集中力を身につけた。

 

わたしは覚悟しやり抜くことを決断したのだ。

 

その決断が正しかったのかどうかはわたしにしかわからないし、

ここで書く意味もない。

 

あなたはあなたの覚悟を見つけ、その覚悟を貫けばいいのだから。

 

このページをあなたが読む頃、わたしは森の別宅に来ている。

 

プロジェクトメンバーであるMもそろそ到着する頃だろう。

 

これからわたしたちは、丘の上に建つ小さな古城で

ポートレイト撮影をする予定だ。

 

そして世界中のアーティストが自由に滞在できる

アトリエ施設を創るための場所も見つけに行く。

 

すぐに駆けつけてくれる豪華なスタッフが集まり

今夜は久しぶりに話が弾みそうだ。

 

丘の上から見下ろす美しい夕景を肴に

ゆたかな時間の中で飲むワインはどんな味なのだろう。

 

この場所へ来るためのチケットに投資できる人だけが

生き残れるのかもしれない。

 

覚悟は、最後に素晴らしい贈りものをしてくれる。

 

その贈りものを創り出すのも、あなた自身なのだ。

 

 

 

 

 

 

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