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【Photographs by】Sally Mann

Immediate Family by   Sally Mann サリー・マン写真集

 

 

 

 

 

あなたはお子さんや家族の写真を撮っているだろうか。

 

あるいは、あなたのご両親が撮ったであろう

あなたの幼い頃の写真を大切にしているだろうか。

 

心動かされる家族写真を知らなければ

今からでも遅くはない、

サリー・マンの写真集を手に取ってほしい。

 

 

 

 

 

 

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【Photographs by】Sally Mann

 

 

 

 

 

わたしをよく知る人でも、わたしの子供好きを知らない人が多い。

甥っ子や姪っ子を撮ったドキュメント写真を見て、

初めてその事実を認めるという具合に。

 

生まれたての猿のような赤ん坊のときも、

幼な子の泣き顔も、

そして現在の、もう子供を卒業した青春期の頃も、

ずっと同じ距離感で視て、記録している。

 

そして、その記録自体に意味はない。

 

彼らの成長記録がただの記録で終わり、すぐにゴミ箱へ投げつけられるのか

それとも何年か経った後、大切な記憶として残ってゆくのかはわからない。

 

どちらにしても、わたしにはどうだっていいことだ。

 

 

それよりわたしは、彼らと一緒に過ごした時間に

フォーカスしていたい。

 

あわよくば、子供という純粋な生き物へ関心を持ち、

ただ可愛く、きれいに見えるだけではない写真を撮るチャンスをじっと待ち望むとき

 

わたしはまず、ひとりの個として存在していてほしいと思うのだ。

 

その理由は、彼ら、甥や姪といった血族の枠を取り払って

ファインダーを覗くときに視える

むき出しの感情を捉えたいからだった。

 

 

たとえそこにいるのが幼い子供であろうとも、

18歳の青年だろうとも

真剣にレンズを向けるときに生まれる呼吸は、

子供たちも察知し応えようとすることを知っている。

 

少年、少女としての独自の個性、物の考え方、反応は、

ひとりの人間として関係することを要求しているのがわかる。

 

 

だから、そこに愛があるかないか、

写真を見たら一瞬で他人にもわかるから怖い。

 

 

 

妹がはじめての子を妊娠した頃、

当時、欧米を渡り歩いていた叔母がわたしに

サリー・マンの写真集を2冊プレゼントしてくれた。

 

サリー・マンはアメリカのヴァージニアの田舎で

子供たちと幸せに暮らす才能溢れる女性だ。

 

 

 

わたしは彼女の自身のポートレイトを見て、

こんなに美しい人が、こんなにもセクシャルな写真を撮るのかと

いい意味でショックを受けた。

 

 

2冊の写真集は、12歳の少女たちを収め世界中で高い評価を受けて注目された

1988年の作品、『12歳』(At Twelve: Portraits of Young Women)と、

 

1992年発表の『イミディエット・ファミリー』(Immediate Family)だった。

 

どちらも現在では入手困難だが、このページを読んでいるあなたなら

中古市場を駆使してでも手に入れるべき2冊だ。

 

 

それまでポートレイトと言えば、

男性写真家が美しい女性モデルを撮影することが多かったアメリカで、

サリー・マンの名声が一気に高まったのだとわかるだろう。

 

 

ページをめくると、彼女の3人の子供達が裸体で自然を駆け回り、

時に血を流し、気取ったモデルとなっている。

 

子供が見せる一瞬の大人の表情や、

彼らの純真さとけだるさを見事に捉えた

モノクロームの写真による透明感のある写真表現は

 

アメリカのヴァージニアの大自然を背景に、

印象的な作品となってわたしの心を鷲掴みにした。

 

 

これらの作品は、児童ポルノであり児童虐待との

激しい非難を浴び、論争を呼んだことでも有名だ。

 

この作品の製作をテーマとして、児童ポルノ論争にも触れたドキュメンタリー映画に

アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門にノミネートされた

『血の絆:サリー・マンの生活と製作』があるので是非、参考に観てほしいと思う。

 

 

“論議など関係なく、純粋に写真表現を愉しめるかどうか

自分自身への嘘発見器試験だと思えばいいのだ“

 

そう言ったのは、少年少女のセックスを撮って監獄に入っても、

相変わらずドラッグ漬けでニューヨークの少年たちと遊んでいる

永遠の不良少年、ラリー・クラーク氏だ。

 

(※このファックなオヤジのこともいずれ書くつもりなので

楽しみにお待ちください。)

 

 

「論議など関係なく」身近な人を撮り、特に自分の子供たちをモノクロ写真で記録していた

サリーの特徴的なところは、8×10の大判カメラを使ってそれをやってしまったという異例さだ。

 

人、特に子供を撮っているとよくわかると思うが、

コンパクトなカメラと一眼レフとの違いもさることながら

 

デジカメとフィルムカメラ、35ミリと中判の大いなる差といったように

使うカメラによってどれだけ写真が変わるのか身にしみる。

 

この写真作品のように、写真芸術という域を超えるのは、

恐ろしいほど道具に左右されるのだろう。

 

 

彼女のように、8×10の大判カメラという

一枚撮るのに気が遠くなるくらい時間がかかる機材で

あの動きの速い子供たちをフィルムに収めるという行為は、

神がかり的に他ならないのだ。

 

 

きっと、サリー・マンの努力だけではなく、

モデルになる子供たちの深い理解がなければ無理だっただろう。

 

 

わたしは、この写真集を貰った頃にはわからなかった

これらの写真から溢れる肌感覚の部分がいまになってよくわかる。

 

大人が、本当に撮ろうとするとき、

子供もそれを欲して美しい存在感を放つ。

 

 

その結果として、2冊の写真集に収められたポートレイトは、

モデルたちの繊細なエネルギーが溢れ出し、せめぎ合い、

異様な迫力や色気を感じさせるものになっているのだろう。

 

 

それはあまりにもドラマティックだからこそ、

「可愛い、きれい、だけを見ていたい」

哀れな大人たちが批判するのは世の常なのかもしれない。

 

 

サリー・マンのように被写体との密度の濃い関係性から

にじみ出てくるようなリアリティこそが、

個のきれいさであり、イノセンスではないのだろうかと考える。

 

 

家族写真という分野の写真で

彼女の作品以上に美しい写真に

わたしはまだ出逢ったことがない。

 

 

 

 

 

 

 

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【Photographs by】Sally Mann

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【Photographs by】Sally Mann

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【Photographs by】Sally Mann

 

 

 

 

 

Sally Mann 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“読む寫眞 Ⅱ” への6件のコメント

  1. ヨシノトオルさん

    覚醒させない人物写真が蔓延っている現代において
    これは、重大な課題であるとわたしは思っています。

    ポルトガルの動画、とてもよくできていますよね。
    彼女のイメージ動画はすぐにポルノ扱いで抹消されてしまうのが残念ですが
    この映像だけ残されていたので、ぜひ、多くの方に見て欲しいです。

    what remainsはですね、、、かなりテーマが深くデリケートなので
    今後も難しいかもしれません。
    やはり、スチール(静止)で、
    できれば紙媒体で手にとって欲しいと思います。

  2. capribluさん

    そうでしたか。感受性が強い方はやはり鋭いですね。
    モーガンもラングも日本で(も)有名で素晴らしいと思います。
    大リスペクトなので、わたしもときどき、彼女たちの作品を手に取ります。

    サリーはそういう意味では入手が難しいというのも特徴的で、
    その根底には、彼女が組織に入っておらず、
    単独の創作行為だからかもしれないと思うのです。

    埋もれてしまう才能に対して、我々はどうすべきか?
    考えてしまいますね。

  3. ストレートで、
    他の写真がよそよそしく見えますね。
    覚醒させる写真、というのか。

    また、
    何故か映像のキャプションが、
    ポルトガル語だったので、
    直ぐに目に留まりました。

    いわく、
    彼女にとって、
    写真が論争を呼ぶことは計算済み。
    それにより、「子供」の既成観念を破りたい。

    さらに、
    2005年に発表された、
    「what remains – 残滓」
    は、未だ、ネット上になく、
    一般には見ることができない。
    彼女の人生をテーマにした動画だとか。

    謎の多い女性ですね。 

  4. maquiさん
    サリー・マンが衝撃的すぎて、昨夜は寝付けず、10数年ぶりに「The Family of Man」の写真を手にとり、開いてみました。
    あのときの感動が再び私の前に現実となって現れました。
    けれど、すでにあの時の私はおらず(20年以上経てますし)、あの日衝撃を受けた作品より、ほかの作品に多くを感じる自分になってました。
    Wynn Bullockの森のなかでうつぶせに寝る少女より、今は、Barbara Morgan、そしてぶれずにDorothea Lange.
    残念ながらサリー・マンの写真はなかった(泣)
    サリー・マンの写真集、買ってみます。ありがとうございます。

  5. capribluさん
    スタイケンですね、わたしも動けない派です。
    サリー・マンは日本ではあまり人気がないようですが
    かなりお勧めです。ぜひ、お楽しみくださいね。
    コメントありがとうございます。

  6. サリー・マンではないけれど、この写真を観て、ふと思い出したのが「ザ・ファミリー・オブ・マン」で観た写真たち。
    写真に映る人間たちのエネルギーとパワー、その迫力に動けなくなった記憶が蘇ります。
    あの感動と似ています、サリー・マン。
    素敵でリアルな写真をありがとう。

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